紺野道昭通信

Ⅰ.経営者の“判断軸”に踏み込む③ 避け続けてきた決断(定期発信-Vol.242)

ある社員に関する資料を前に、しばらく手が止まったことがあります。

結果や規則という視点だけで見れば、資料からある程度は物事が見えます。

ただ人はそう簡単に割り切れません。

過去の経緯や本人の事情、今まで頑張ってきたことなどを考えると、最後の決断がどうしても重くなります。

 

信賞必罰は勿論大事です。

良い行いをしっかり評価し、そうでない場合はそれなりの対応をするのは当たり前のことです。

しかし今は、そう単純ではありません。

少し強く言えばハラスメントだと云われかねません。

受け取られ方によっては、労基署だ、弁護士だという話にもなるでしょう。

そうなると、経営者側も無防備ではいられません。

 

もはや昔のやり方が通用する時代ではなくなりましたから、私はできるだけ感情を入れずに記録を残し、淡々と対応するようにしています。

 

本音を言えば、もっとストレートに言いたい時もありますが、さっきも書いたように、伝え方一つで別の方向へ飛んでいく時代です。

こういうのは自分らしくないなと感じる時もあります。

私は本来、感情を重んじ腹を割って話したいタイプです

ただ会社を守るためには、感情でぶつかるだけではダメなのです。

そこが今の時代の難しさだと思います。

もう一つ難しいのは、業績が多少安定してくると、経営者に妥協が生じやすいことです。

赤字なら即座に手を打たねばならないことでも、順調な経営状態なら問題を先送りしやすくなるのです。

本人も頑張っているし、別に今すぐでなくとも…

そうやって少しずつ判断が甘くなります。

しかし会社が大きくなればなるほど、一人の緩みが全体に与える影響は大きくなります。

私は、個人の能力云々より、やろうとしないことの方が問題だと思っています。

不器用でも、一生懸命やる人なら伸びる可能性がある。

一方で、そもそもやる気がない、向き合う気がない、責任を持つ気がないとなれば別です。

真面目に頑張っている人が疲れてしまいます。

 

厳しさという言葉は、誤解されやすいものです。

怒鳴ること、感情的になることが厳しさではありません。

ほんとうの厳しさとは、組織と本人の未来を考えて、言うべきことを言い、決めるべきことを決める責任を持つことです。

私自身、まだそこは修行中です。

これまで避けてきた自覚もありますが、そのままでは会社が弱くなる。

優しさだけでは現場は守れません。

優しさと甘やかしも違うからです。

 

判断軸というのは、苦しい時に逃げないためにあるのです。

人を大切にすることと、ダメなことをダメと言うことは、決して矛盾しません。

むしろ、両者が揃って初めて、本当に人を大切にする経営だと思います。